
現役販売員の鶴田です。
オーダーって万能ではないんです。当サイトでしか読めない独自の既製品とオーダーのメリット・デメリット解説。
オシャレなスーツを作るヒントになる必見の内容です。
目次
既製品のメリット
よく既製品のメリットしてあげられるのが
- すぐに着られる
- オーダーと比べて安い
- 完成品だから、仕上がりのイメージがしやすい
という点。
当たり前といえば当たり前ですよね(笑)
こんなメリットしか説明できない既製スーツ屋さんは、オーダー屋さんに潰されちゃいます( 一一)
既製品って、実はオーダーに負けない魅力を持ったスーツなんですよ。
当サイトでは、もっと本質的でディープなメリットを解説します。
既製品のメリット①デザイナーが考えた最も美しい完成形
この肩幅だったら、この着丈がキレイ。
この着丈だったら、これ位の胸幅がバランスが良い。
ジャケットがこのシルエットなら、パンツはこんなシルエットが美しい。
こんな風にデザイナーが、ミリ単位の数値にこだわって「もっとも美しい形」に作り上げたのが既製品ですね。
デザイナーが考える、理想的なシルエットバランスのスーツを着ることが出来るのが既製品のメリットなんです。
既製品のメリット②体型の欠点カバー
人間は体を布で覆えば覆うほど、無意識のうちに「中はどうなっているんだろう」と想像します。歯医者で「マスクをした女性」が美人に見えるのは、マスクの下に隠れた素顔を、自分の理想の顔を想像しているため。
カラダを隠して、理想的なカラダがその下にあるように錯覚させるために、デザイナーがシルエットを計算して作ったのが既製品です。
「最も美しい完成形」である既製品を着れば、着た人の体も美しく見えます。既製品は体型の欠点をカバーして理想体型に見せてくれるんですね。
既製品のデメリット
①万人にサイズが合うわけではない
既製品=完成形とはいえ、サイズ展開には、どうしても限界があります。
サイズに限界があるからこそ、似合う人・着れる人が限られてしまうのが、既製品のデメリットですね。
②修理をすると、完成形が崩れる
スーツはカジュアルウェアと違って、体型に合わせて修理できる箇所が多いのが特徴。
既製品のサイズが多少合わなくても、修理をすることで体型に合わせることが出来ます。
とはいえ...既製品=完成形。修理をすることで、既製品の完成度が下がってしまう。
修理をしないと体型に合わない。
でも、修理をすると、既製品の完成度が下がってしまう。
そんな、矛盾が起きてしまうのが、既製品のサイズ選びなんですね。
既製品を買う時のポイント①完成形を崩さないように修理は少しだけ
完成形である、既製品はお直しをすると、どうしても完成形が崩れてしまう。
でも、修理をすると、完成形は崩れるけど、「体型に合う」というメリットもあります。
完成形が崩れるデメリットよりも、体型に合うメリットが上回る程度の、修理をするのが既製品をキレイに着るコツです。
1サイズ程度広げたり、縮める程度の修理なら、完成形を崩すデメリットよりも、体型に合うメリットの方が大きくなります。
あくまで目安ですが...着丈や袖丈だったら±2~3センチ、ウェストだったら±3~4センチ程度が、「1サイズ程度の修理」ですね。
既製品のサイズの選び方は、↓の2記事で解説しています
参考記事①スーツの正しいサイズの選び方[ジャケット編]!サイズには、数値的な目安があります。
参考記事②スラックスの正しいサイズの選び方。サイズは「幅」と「丈」に分けると選びやすい
既製品を買う時のポイント②大幅な修理が必要な場合は、パターンオーダーがおすすめ
「1サイズ程度の修理じゃ、納まらない」
「でも、あこがれのブランドだから、ココのスーツが着たい」
そんな時は、パターンオーダーを利用しましょう。パターンオーダーというのは、既製品のシルエットをベースに体型に合わせてサイズ調節するオーダーシステム。
ちょっとマニアックな話ですが、例えば...。ジャケットの着丈を詰めると、既製品よりも裾からポケットまでの距離が短くなってしまいます。
でも、裾からポケットまでの距離もデザイナーが考えたベストバランスなのが既製品。修理をすると完成形が崩れてしまうわけです。着丈に限らずに、こういうバランスの崩れが起きてしまうのが既製品の修理。

photo by http://www.tailor-kitahara.co.jp/wp/wp-content/uploads/2013/02/suits_1.jpg
既製品だと、ポケットの位置を変えることはできませんが...パターンオーダーの場合、ポケットの位置を着丈に合わせて、ベストバランスになるように再調整してくれます。
サイズの調節内容に合わせて、シルエットやパーツの位置を微調整してくれるので、既製品を修理するよりも完成度が高くなるのがパターンオーダーの特徴なんです。
最近では、既製品と並行して扱っているブランドも増えています。既製品を大幅に修理する場合は、パターンオーダーに切り替えた方がキレイなシルエットで出来上がります。
オーダーのメリット
よく言われるオーダー(フルオーダー・パターンオーダー)のメリットは
- カラダにフィットする
- 裏地やボタンを自由にカスタマイズできる
というところでしょう。
これは、既製品にはないメリット。このメリットをひっくるめて「世界に一つだけのスーツが作れますよ」なんてセールストークをしてくる店員さんも多いですね。
この言葉に惹かれて、スーツをオーダーする人も多いはず。
メリットはデメリットの裏返し
一般的にオーダーのデメリットは
- 既製品と比べて高い
- 納期が掛かる
- 仕上がりのイメージが付きにくい
といったところ。
これは、デメリットですが。じゃあ、お金にも納期にも余裕がある人にとって、オーダーは万能かというと...。
洋服に限らずメリットというのは、裏を返せばデメリットになります。
例えば、柔らかい生地のスーツなら
- メリット→柔らかいから動きやすい
- デメリット→細い糸で出来ている柔らかい生地は耐久性が低く、デリケート
といった感じに「柔らかい」ということはメリットにも、デメリットにもなる。
これは、オーダーのメリットにも言えることです。
オーダーのデメリット①体型の欠点が、そのまま出てしまう
オーダーのメリットである「体にフィットする」とメリットは、裏を返せば、体型そのままのスーツが出来る...ということです。
肩幅が狭くて、お腹が出ている人にフィットしたスーツを作れば、当然スーツも肩幅が狭くて、お腹が出たスーツが出来上がります。
カラダにフィットして、楽かもしれませんが...。
カラダの欠点が、そのまま出たスーツは、シルエットがキレイとは言えません。
こういう場合は、
- 肩幅や胸幅を少し広くとって、お腹の出っ張りを目立たないようにしたり
- 着丈を少し長めにして、縦のラインを強調してスッキリ見せたり
体型に合わせつつ、気になる部分を目立たないようなシルエットにするんですが...。
これはかなり、高度なテクニック。体型にフィットさせるだけの方が、ずっと簡単。
オーダーは、「体にフィットするように作る」ことが重視されるし、簡単なため、どうしても体の欠点が出やすいのです。
オーダーのデメリット②カスタマイズの仕方によってはダサくなる
生地とボタン、裏地の相性etc、付属品も含めて、デザイナーが最も美しいバランスを考えて作ったのが既製品です。
オーダーの時のボタンや裏地選びは、デザイナー気分を楽しめる時間ですよね。でも、一つ間違うと、一気にスーツがダサくなってしまう作業でもあります。
仕上がったオーダースーツを見て、「ちょっとやりすぎちゃったな」なんて思った経験がある人もいるのでは!?
裏地やボタン選びのコツは、オーダー初心者必見。オシャレなスーツのカスタマイズ方法で解説しています。
オーダーを作る時のコツは、美容室と一緒
既製品は、すでに作られたもの。
それに対して、オーダーは、スタッフとお客様で一緒に作り上げるものです。これって、美容院や床屋と一緒なんですね。
初めて行く美容院で、出来るだけイメージ通りの仕上がりに近づけるには、どうしたらいいと思いますか?そう考えると、自然に答えが見えてくるはず。
ポイント①自分のイメージを写真で伝える
イメージを口頭で伝えるのは、難しいものです。
自分のイメージに近い画像や雑誌の切り抜きを持っていくと、イメージをスタッフと共有出来て、仕上がりの完成度が高くなります。
「違うブランドの切り抜きでもいいの?失礼にならない??」
「写真のモデルさんと、自分の体型が全然違うけど、笑われない?」
これ、全く問題ありません。笑いません!!
ここで、顔色が変わるスタッフがいたら、そのスタッフに作ってもらうのは、やめたほうがいいですね。そんなスタッフに、採寸&アドバイスしてもらっても良いスーツは作れません。
とはいえ、他社ブランドのスーツと自社ブランドのスーツは当然、別物。「それっぽく」作ることはできますが...細かいバランスまでは、どうしても違いが出てしまうもの。「全く同じにして欲しい」というリクエストになると、難しいのが事実です。あくまで、「イメージ」として、切り抜きや画像を持参したほうがいいですね。
写真のモデルさんの体型と、着るご本人の体型が違えば、たとえ同じスーツでも見え方は違ってしまうものです。
スタッフの「お客様の体型だったら、こういう風にアレンジしたほうが...」というアドバイスには、耳を傾けたほうがいいでしょう。アレンジを加えたほうが、逆にイメージに近づくことも多いのです。
ポイント②2~3回、同じお店で作ってみる
美容院も何回も通うと、好みをわかってくれて、理想の仕上がりに近づくのは、よくあることです。
オーダースーツも一緒。
1回作っておけば、「前回は○○なところがイマイチだったから、今度は△△にしたい」といった感じに、前回の続きからやり取りすることが出来ます。こうやって、作るたびに、前回作った分を踏まえて、バージョンアップさせていくのが理想のオーダースーツを作るコツです。
一口に「オーダー」といっても、そのシステムはブランドによって色々。毎回違うブランドで作っていては、そのたびに勝手が違って、なかなか仕上がりのクオリティが上がりません。
クレームレベルの仕上がりでないかぎりは、同じお店、同じスタッフとコミュニケーションを重ねて、2~3回作るのがいいでしょう。
今回はここまで。最後まで読んでいただきありがとうございます。