
現役販売員の鶴田です
「○○というブランドは縫製が悪い」
「××は値段の割に縫製が良い」
洋服を批評する中でよく言われるのが縫製について。
悪い縫製と聞くと縫い目がガチャガチャ汚かったり、縫い目が部分的に解れてしまっていたり。縫い目の不備=悪い縫製とイメージしませんか?
これは悪品ではなく不良品。縫い目に不備のある商品を買ったお店にもっていくと縫い目に不備のない同じ商品と交換してくれますよね。同じ商品でも縫い目に不備のない物があるわけです。
不良品はあくまで偶発的に発生するもの。計画的に作られた良いものが良品、悪い物が悪品です。
不良品の発生率を下げたり、偶発的に発生した不良品をお客様に渡らないように服屋は努力する必要はありますが、不良品=縫製の悪い悪品というのはちょっとニュアンスが違います。
一見問題ない縫い目のように見えて実は悪い縫製だったなんてこともあります。
今回はそもそも良い縫製とは何か、縫製の良いスーツの見分け方を徹底解説。
糸が切れるのが良い縫製
縫い目には必ず負荷が掛かります。スラックスだったら、しゃがんだり立ったりした時。ジャケットやスラックスだったら、手を上げたり下げたりする時。
動いて過剰な負荷が掛かった時に糸が切れてくれるのが本当の良い縫製です。良い縫製=負荷のかかる部分をあえて緩く(甘く)縫っている縫製です。もし糸が切れてくれなければ、負荷が生地にかかり生地が破けてしまいます。
糸が切れるのと、生地が避けるとのではどちらが良いでしょうか?
答えは糸です。糸の場合たとえ切れてしまっても数百円から高くても千円前後で綺麗に元通り修理することが可能です。
生地の場合、直径5㎜の穴でも元通りにするのには5000円も掛かります。しかも穴をふさぐために共生地も必要です。洋服屋を10年やってきた経験上、直径5㎜程度の穴で済むことはほとんどありません。修理の見積もりを出すと数万単位の金額になるケースがほとんどです。
もう新しいスーツを買ったほうがいいですよね(-_-;)
意図的に甘く縫う縫製のメリットは他にもあります。
長く着ることによって縫い目が着ている人の動きや体型に応じて馴染み着れば着るほど、着心地がよくなってきます。
着心地を追求するフルオーダースーツで縫い目のテンション(強さ)をミシンよりも縫い目を緩くできる「手縫い」を多用するのもその為です。
縫い目を引っ張ってみよう
良い縫製かどうか見極める手段が一つあります。スラックスのお尻の部分の縫い目を引っ張ってみてください。
引っ張ることで縫い目が少し開いてくれるのが良い縫製。逆に引っ張っても縫い目がびくともしない縫製は強く縫いすぎかもしれません。
お尻のような負荷が掛かりやすいところが固く縫われていると動いた時に糸が頑張りすぎてしまい生地が先に避けてしまいかねません。そうなったら、修理代数万円になるかもしれません。
良い縫製=オシャレは成り立たない
良い縫製は動きやすさや「持ち」を判断するうえでは大事な要素です。
でも縫製の良し悪しとオシャレさの比例関係は成り立ちません。
洋服はどうしての一つの側面だけで判断しがちです。
縫製が良いとか、
素材が良いとか、
このデザインが珍しいとか。
洋服とは素材とデザイン、色、など様々要素で構成されその総合力で初めて良品か悪品か及第点か判断できます。
「縫製は洋服を構成する要素の一つに過ぎない」という点も意識しながら今回の記事を買い物の時に役立ててみてください。
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