現役洋服屋の鶴田です。
実は高級なスーツほどデリケートで、脆いのです。
とはいえ、高級品にはオシャレな物が多いのも事実。
高級な服の正しい取り入れ方解説です。
目次
「高いスーツは長持ちする」は、7割ウソで、3割ホントの話
「高い服だから、長持ちする」
スーツに限らず、高級な服に対してこんな風に思う人も多いはず。
でも、スーツに限って言うと、「高い服だから長持ちする」というのは、7割ウソで、3割ホント...という感じ。
高級スーツはデリケート素材ゆえに脆い
まずは、7割ウソの部分から、お話すると...。
スーツに限らず、服は丈夫さや機能性を重視した「実用性」を重視した服。
もしくは、見た目の美しさを追求した「装飾性」を重視した服。
この二つに分けることが出来ます。
例えば、「洗えるスーツ」とか、「摩擦に強いスーツ」なんて言うのは、「実用性」を重視した服ですね。
逆に、高級感を感じさせる艶のある生地を贅沢に使ったスーツ...こんなスーツは「装飾性」重視のスーツ。
で、この「高級感を感じさせる艶のある生地」というのが、「実用面」ではとっても厄介。
「艶のある高級生地」は、非常に細い繊維を使って作られるため、比較的薄手です。
薄手ゆえに、メンテナンスを怠ると、着用中の摩擦で生地がが薄くなって透けてしまったり...、最悪破けてしまったり。
透ける・破けるを回避できても、着用時の「圧」や「摩擦」で、すぐに生地がテカってしまいます。
私も以前着ていた上質素材のスーツで苦い思い出が。
着る度に、入念にブラッシングしていましたが...3日に1度くらいのペースで着ていたら、1年くらいで(確かそれぐらい)でお尻の辺りにテカリが( ;∀;)
高いスーツは、「装飾品」ゆえに、耐久性度外視。見た目重視の繊細な生地を使う。繊細な生地ゆえに「長持ち」どころか非常にデリケートなのです。
「週に1回」「月に1回」ペースの着用で手入れも怠らなければ、丁寧に使えば、「長く」使うことはできなくはないですが、「たくさん」使うのは難しいでしょう。
高級スーツは強固な仕立てで型崩れしにくい
今度は、「高いスーツは長持ちする」の3割ホントの話。
スーツの値段は、基本的に「生地」と「仕立て」の2つで決まります。
で、さらに仕立ては、「縫製」と「副資材」の2つに大きく分けることが出来ます。
縫製は、なんとなくイメージできるかと思いますが...。副資材と言われても、ピンとこない人が多いはず。
スーツの中(表生地と裏地の間)には、実はいろいろな詰め物がしてあります。肩パッドが代表的な詰め物=「副資材」ですね。

で、スーツの耐久性、とりわけ型崩れのしにくさを左右するのが、「芯地」。
スーツのオシャレに必要なのは、「高級感」「立体感」「統一感」の3つです。
スーツをオシャレに着る必須内容になっていますので、ぜひご覧になってください。
とりわけ「スーツの仕立て」において、大切なのが「立体感」。
シルエットが立体的になることによって、着た時に胸板の厚い男性的外見=頼りがいのある第一印象を演出してくれるわけです。
そして、この「立体感」を演出してくれるのが「芯地」。
芯地には、いくつかグレードがあり、
- ジャケットの前部分すべてに芯地を入れた総毛芯仕立て
- ジャケットの前・上から半分までに芯地を入れたハーフ毛芯仕立て
- ハーフ毛芯を縫い付けるのではなく、接着剤でくっつける接着芯仕立て
の3つが主なところ。
主に、
- 総毛芯は、重さがあるものの立体的、かつ毛芯が土台的な役割をして型崩れが最もしにくい
- ハーフ毛芯は、立体感・耐久性がやや劣るものの、軽い着心地
- 接着審は、軽く、縫製がカンタンゆえに安価。でも接着剤が剥がれるとアウトなので、耐久性を低い
というのが、特徴ですね。
高級なスーツは、必ずではありませんが...たいていは「総毛芯仕立て」。
画像は「総毛芯仕立て」の内部構造です。複雑でしょ?

複雑な内部構造ゆえに作るのに手間暇がかかる。しかも使われているのは、最高級のグレードの毛芯。ゆえに高いのですが...。
最高級の毛芯を内部構造に使ったスーツは、非常に強固。なかなか型崩れしません。
例えるなら、テント。
テントは布切れだけでは平面のまま。骨組みがあるから、立体的なのです。
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スーツの場合は、芯地は骨組みの役割をします。だから長持ちする。
高級スーツは、デリケートな生地ゆえに、高頻度にたくさん着ることはできない。でも、極上の芯地を使っているがゆえに型崩れしにくい。生地さえ傷ませなければ、年単位で長く使うことが出来ます。
「たくさん」は着れないけど、しっかりメンテナンスしてあげれば、「永く」着ることが出来るのが、高級スーツの特徴...と言えますね。
高級スーツの正しい取り入れ方。
型崩れはしにくいけど、デリケートな生地ゆえに高頻度で着用すると、すぐにテカったり・破れたりしてしまうのが高級スーツ。
正しい取り入れ方は、
- 着数を揃える
- ここぞという時の一張羅
として、取り入れるのが正解です。
その① 着数を揃える
高頻度で着ると生地が傷むのが、高級スーツ。
ならば、着る頻度を下げれば、デイリーに使えるわけです。
で、1着当たりの着る頻度を下げるには、当然スーツの着数がある程度必要になってきます。
「じゃあ、何着そろえればいいの?」
スーツ生地の原料である「ウール=毛」は、湿った状態での摩擦が、生地を傷める一番の原因。
着用中に付いた汗が、乾ききる前にスーツを着てしまうと...。
生地同士がこすれて毛玉になりやすかったり、生地が薄くなってしまいます。スラックスが、こんな状態になってスーツを処分した人も多いはず。

生地を傷めないためには、スーツに汗を乾かすための休息を与えないといけないわけですが...。
その時間、実に着用した時間の3倍。
朝の7時にスーツに着替えたとして、夜の9時に家についてスーツを脱ぐ。これで着用時間は、約14時間。仕事終わりに飲み会...なんてことになれば16時間は着用することになるでしょう。
この場合、着用16時間×3倍なので、休息に必要な時間は、48時間つまり2日間ですね。となれば、スーツを3着持てば、休息時間を確保出来ますが...。
これはあくまで平均値。
高級なスーツ生地は、細い糸で織られ、結果的に薄手。もともと摩擦に弱いので、着た時間×4~5倍は休ませてあげたいところ。
となれば、
- 16時間×4倍=64時間つまり約3日間となれば、4着ローテーション
- 16時間×5倍=80時間つまり約4日間となれば、5着ローテーション
となりますね。
いずれにせよ、週に1回くらいの着用で済むローテーション。つまり4~5着でのローテーションを組めれば、デイリーに高級スーツを使っても、ヘタりにくく長く使えることでしょう。
その② ここぞという時の一張羅にする
高級スーツを大事に、かつデイリーに使うとなると4~5着のスーツで着まわす必要があるわけです。
とはいえ、4~5着をすべて高級スーツにする必要はありません。
スーツに限らず服って、似たような価格帯で揃えてしまいがち。
それも悪いことではありませんが。
着数を揃えるのにお金もかかるし、数着まとめて傷んでしまうと、買い替えの時の負担も大きいものです。
むしろ目的に応じてスーツの価格帯を変えて揃えるのが、賢いというもの。
例えば、量販店の手ごろなスーツで3着。そして、「ここぞという時」用に高級スーツを1着の4着ローテーション。
基本的なローテーションは量販店のスーツで3着で組む。週の1番大事な時に「高級スーツ」を投入する。
こうすれば、経済的負担も少なく着数を揃えられる。十分な着数が揃えば、高級スーツを「永く」使うことが出来ます。
後述しますが、GUの8000円のスーツなんて10万円台のスーツを着てきた自分でも納得のクオリティ。基本ローテーション用に3着そろえても、さほど痛手ではないでしょう。
guのスーツについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、興味ある方はぜひ。
高級スーツでも元を取るなら、「オンオフ兼用」
耐久性が低いからこそ、「ここぞ」という時に着るのを取っておきたいのが、高級スーツ。
とはいえ、ビジネスの場において、「ここぞ」という時があまりない(^-^;...なんてこともあるでしょう。
当ブログ「SuitLabo」的コスパは、「買った金額÷使った回数」したときにいかに安くなるか。
もちろん高級スーツを着た時のなんとも言えない高揚感は、コスパでは測れない価値がありますが...。
とはいえ、着る機会があまりに少ないと、さすがに損した感じになるものです。
そこで「オンオフ兼用」。
ビジネスシーンで「ここぞ」という機会が少なくても、休日でも着れるスーツを選んでおけば、ある程度「元を取った感」を感じられ程度には、着ることが出来るでしょう。
「休日も着れるスーツってどう選べばいいの?」
そんな方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
ここでも、カンタンにオンオフ兼用出来るスーツの見極めポイントを解説すると
- ジャケットの着丈は短め
- 肩パッドは薄め、もしくはノーパッド
- 柄は基本的に無地
- パンツは細身とりわけ裾幅は細め
といったところですね。
ぜひご参考に。
丈夫な高級スーツを探すなら、「目付け」に注目
「高いのに、デリケートって...。丈夫な高級スーツってないの?」
実は、あることにはあります。
丈夫な生地かどうかを見極めるポイントは「目付け」。
目付けとは、150センチ×1メートルのスーツ生地の重さのこと。
オーダースーツ屋さんに行くと、生地見本に「○○g/m」といった表記シールが貼ってありますが、あれが「目付け」。

基本的に目付けが重い=丈夫な生地...と考えてオッケー。
目安としては、380~430gくらいの生地が、「ヘビーウェイト」とされて耐久性も高い生地です。
でも、「ヘビーウェイト」というからには、これ位の目付けの生地はちょっと重いし、堅い。
現代では、スーツの着心地に軽さが求められることも多く、オールシーズン生地で250~260g。夏物で240g以上、冬物で260g以上といったところですね。
つまり「ヘビーウェイト」の生地は、いつものスーツよりも1.5~2倍の重さ。
常時ジャケット着用のワークスタイル&やせ型体型の私には、「ヘビーウェイト」の生地はちょっと手が出ませんが...。
重くてかたい生地でも、
- 「軽く感じる」ように、仕立てる
- 堅い生地を長年着こんで、柔らかくする
ということは可能です。
せっかくの高級品だから、永くたくさん着たい...という人は、「ヘビーウェイト」の生地を選んでみるのも良いでしょう。
ここまでのまとめ
- 高級スーツはデリケートだけど、型崩れしにくい
- 「たくさん」ではなく、「永く」着るのはおすすめ
- デイリーに使うなら4~5着ローテーション
- 「ここぞ」の一張羅なら、オンオフ兼用がおすすめ
- 丈夫な高級品を探すなら、ヘビーウェイトの生地
そもそも高級スーツって必要なの?
ここまで読むと
「高級なスーツってなんかめんどくさいな」
「そもそも高級である必要なんてあるの?」
そんな風に思う人も多いでしょう。
ぶっちゃけ、オシャレは服の値段で決まる...なんていうことはありません。
オシャレは、「着こなし」と「差別化」で決まります。
スーツの場合、「着こなし」こそ、当ブログで提唱している「立体感」「高級感」「統一感」の3つの感になるわけですが。
どんなに「3つの感の法則」的に、正しい着こなしをしていても、みんなが似たような着こなしをしてしまっては、相対的に価値が下がってしまいます。
そこで、「差別化」。
正しい着こなしをしたうえで、「トレンド」なり「個性」なりを加えることで、人と差別化が出来、人といい意味で違う状態=オシャレだね...と評価されるわけです。
で、着こなし単位なら、高級服を使わずとも、「差別化」をすることが出来ます。だから、高級品を使わずともオシャレは出来るわけですが...。
とはいえ、
高級服はシンプルながら、安い服にはない圧倒的な高級感を持っていたり。
ファストファッションにはない、さりげなくかつ個性を感じさせるデザイン性があるものです。
例えば、ダブルブレストのスーツとかも、さりげなく個性を感じさせるデザインですね。

他にも、シングルブレストだけど、襟がちょっと太いワイドラペル。

細身の1タックだったり。

高級品の方が、デザイン的に、なにかと差別化をしやすくしてくれるのも、事実です。
着こなし単位で差別化が出来る人は、高級品を買わなくても良いし、さらに差別化したいなら高級品に手を出すのも一つ。
逆に、着こなしに自信がない人は、最低限の着こなしは押さえつつ、あとはアイテム単位(=高級品)で差別化。それも、賢い選択でしょう。
ようは使いよう。当たり前と言えば、当たり前の話ですが...(^-^;
ここまで、解説すると疑問に思うのが、
「じゃあ安いスーツってどうなの?」
「安いスーツでもオシャレをするには、どうすればいいの?」
「高いスーツは長持ちしない...じゃあ安いスーツは長持ちするの?」
という疑問。
ここから先は、有料...とはいえわずか150円での公開です。
当サイト、通常5~6000文字程度の記事がほとんどですが、当サイトはここまでで、約7000文字。
有料部分と合わせると、1~1.2万文字と、いつもの2倍のボリューム。つまり無料部分のクオリティは一切落としていません。
ここから先の、目次を公開すると
〇安いスーツでもオシャレは出来る
〇オシャレのコツはサイズ選び
〇サイズは「幅」が優先順位1位【幅の選び方】
〇「丈」がオシャレ度を決める【丈の選び方】
〇安いスーツの方が丈夫
〇安い服でも損をする人・得をする人の違い
〇安い服だからこそ、定期的にアップデート
といった内容でお送りします。
基本的に週1ペースで、のんびり更新の当ブログ。1か月分の有料記事をすべて購入してもファッション雑誌よりも安い600円。
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しかも、コメント欄にて当記事内容に関する1問1答形式のQ&A付き。有料だからこそ、あなたがオシャレになるためのサポートは怠りません。
とはいえ、有料記事です。
無料の記事と違って、その情報に触れることが出来る人は、購入を決意したごくわずかな人のみ。
無料記事を見てくれた人のうち1%くらいじゃないかな?この記事を買ってくれるのは。
ごくわずかな人しか知りえない情報だからこそ、人と差をつけることが出来ます。
みんなも知っているような情報なんて、ただの「当たり前」。
みんなが知らない情報だからこそ、価値がある...というものです。
想像してみてください。
周りの人から、「最近なんだかオシャレだよね」と言われる自分を。
身近な人気者のあの人よりもオシャレになっている自分を。
そんな未来を手に入れたい方は、ぜひこの先も読んでみてください。
洋服屋歴十数年。誰よりも真摯にオシャレに向き合って構築したこの知識には絶対の自信があります。損はさせません。
今回は、安いスーツでも10万円のスーツに見せることが出来るスーツの選び方。そして、安い服をさらに安い買い物にする、「安い服との付き合い方」の指南でございます。
ここから先は、作り手とフォロワーとをつなぐサービス「note」にて、「安いスーツってダサいの?すぐにダメになるの?【スーツの値段について】」のタイトルで公開しています。
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