
現役販売員の鶴田です。
2017年の秋冬の流行解説が非常に好評でした。下手したらこのブログのアクセスの半分くらいは、この記事なんじゃないか?っていう位。
流行、流行なんていうと「うちの職場は堅いから、流行を取り入れるなんて無理...」なんていう人もいるはず。
表層的なトレンドを追いかけていると、スーツの場合どうしても職場の関係で取り入れるのは難しい...なんてことになりがち。
Suitlaboでは「なぜそれが流行るのか?」・「どうして?」にまで突っ込んだ深層的な2018年春夏流行解説。流行の源流さえ理解すれば職場環境によって表層的なトレンドは無理でも、いくらでもトレンド感を着こなしで表現できるのです。
2018年もトレンドは「装飾性」=「英国調」
ダークスーツ(紺やグレーの暗い色のスーツ)に白か青の無地柄のシャツ。これにストライプなど無難な柄の地味な色のネクタイ、これがビジネスの基本スタイル。
この10年以上ず~っとこんなスタイルが基本になってきているわけですよ。いくら仕事着とはいえ、さすがに飽きてきません?
買い物する時「シンプルなのはもう持っているから、ちょっと変わったものはないかな~」って思ってません?
自分が思っていることは、みんなが思っているもんです。「みんなの気持ち」の変化の表れがトレンド。トレンドってアパレル業界が結託して作っているんじゃないんです。みんなで作っているんです。
...で、「シンプルなスーツスタイルなんてもう飽きちゃったぜ」という流れが強くなり始めてきたのが去年の秋冬。
強めのストライプ柄やチェック柄のスーツでシンプルなスーツスタイルに「装飾性」を加えて、「脱シンプル」を図ったのが去年の秋冬トレンド。

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2017年の秋冬トレンドについてはこちら。本記事と合わせて読むと「トレンドは点じゃなくて線」なのが分かるはず。
「線」でトレンドを理解すれば、去年買った服を今年らしく着る方法だって身に着いちゃうのです。
話を戻して...2018年春夏のトレンドの話。メンズファッション、とりわけスーツにおいては高額品であるのも手伝って、流行に対して非常に保守的。
「秋冬はちょっと盛った感じがオシャレだったけど、春夏はやっぱりシンプルなのが良いかな~」
なんてトレンドが大きくユリ動くことはありません。重い扉がゆ~っくり開くように「脱シンプルの価値観」が少しずつ浸透していくのが、メンズファッション及びスーツのトレンド。
なので2018年も「装飾性」・「脱シンプルなモノ」がオシャレに感じる「みんなの気持ち」=トレンドは継続。
とはいえ、でたらめに「装飾性」を着こなしに取り込めば、ただの「派手な人」。ビジネスシーンにおいてはネガティブなイメージを持たれかねない。
正しい「装飾性」の取り入れ方を端的に表しているのは、パリコレデザイナーであるジョン・ガリアーノの「ファッションとは引用と編集である」という言葉。
過去のファッション史の中から、今の時代の価値観に合う元ネタを「引用」してきて、今の時代に合わせて「編集」するのがトレンド。だからトレンドってリバイバル=繰り返すって言われてるんですね。
装飾的=足し算的なコーディネートがオシャレに感じる今の価値観。この元ネタになっているのが「英国の高級仕立て屋さんが用いたスーツのディティール」や「英国貴族が好んできたアイテムやコーディネート」など古き良き英国風いわゆる「英国調」。
高級仕立てのスーツも英国貴族の着こなしも高級かつ品格漂うもの。これを引用すれば、装飾的な着こなしでもビジネスにふさわしい雰囲気を作ることが出来るのです。
これが元ネタになっているからこそファッション雑誌やブランドはこぞって「英国調」なアイテムを打ち出しているのです。英国調についてはこちらの記事で取り上げています。トレンドの理解だけでなく、着こなしの引き出しも増える内容ですよ。
詳しくはリンクを読んでいただきたいですが、本記事でも簡単に「英国調」について解説しますね。英国のクラシックなスーツって今の時代のスタンダードなスーツと比べてディティールが多いんですね。
分かりやすいところだと、かつてお釣り(チェンジ)を入れる為のポケットだった「チェンジポケット」。

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腰位置に付いた小さいポケットがチェンジポケット。あなたの手持ちのスーツと比べてみてください。チェンジポケットがついていない物がほとんどのハズ。
本来ほとんどのスーツについていないからこそ、チェンジポケットがついていると「装飾性」を感じるのです。その「装飾性」の元ネタになっているのがたまたま、「英国調」という話。
大切なのは「装飾性のある着こなしがオシャレに感じてきた価値観」→「英国調を元ネタにすると装飾性」を獲得出るという流れ。
何の変哲もない普通の生地がいくら英国製だったとしても、それは「英国調」でも何でもなく、ましてや「装飾性」は獲得しているわけではありません。あくまで「英国調」を元ネタに着飾った時に獲得できる「装飾性」が、今はオシャレに感じるという話。
春夏は素材感に装飾性を加えてみよう
保守的なスーツの世界ゆえに柄やディティールは秋冬から継続しているトレンド。
柄については2017年秋冬のトレンド解説、ディティールについては英国調について解説した記事を読んでいただければ理解できるので是非目を通してみてください。
で、今回は素材の話。ズバリ春夏のトレンドは「麻素材」。

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麻のスーツ=「英国調」...っていうわけでもありませんが、英国貴族が避暑地で着ていた素材に用いられたのが「麻」素材なのは間違いない事実。麻のスーツは画像のような茶色やベージュが用いられていました。
なので、「英国調リゾートファッション」の流れで「ベージュ」や「茶色」のスーツもトレンド。
で、話を戻して...画像を見ればわかると思いますが、麻素材は霜降りのようなかすれた生地の表情を持つのが特徴。一般的なスーツの均一な生地の表情と比べると、麻のかすれた表情を素材に表情を感じ「装飾性」を着こなしに加えてくれるのです。
柄やディティールに「装飾性」を求めた秋冬のトレンドに対して、「装飾性」を求める対象が「生地の表情」や「色」にまで広がったのが2018年春夏のトレンドの傾向。
カジュアルセットアップにおいてもその傾向は一緒。
例えばデニムのセットアップも生地に表情があり、着こなしに「装飾性」を獲得してくれる素材。

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生地は横の糸と縦の糸を組み合わせて織るもの。本来は縦と横の糸は同じ色で織られますが、デニムは横糸が白い糸・縦横がインディゴブルーの糸。色の違う2色の糸で織られるからこそ、デニムはかすれたような表情を生むのです。
ちなみにguでも大型店限定ですが、デニム風のセットアップを展開しています。

photo by http://dankore.jp/wp-content/uploads/2016/08/image29-1.jpg
ぜひ試しに羽織ってみてほしい。シンプルなコーディネートに羽織っても、なんとな~く様になっているのを感じるはず。このなんとな~く様にしてくれているのが、生地の表情から得られる装飾性なのです。
流行の源流を知れば、堅い職場でもトレンド感を
「麻は皺になるし...デニムなんてうちの会社じゃぜ~ったい無理!!」
なんていう方も表層的なトレンド理解ではなく、トレンドの源流を知れば職場の雰囲気に合わせた、トレンドの表現が出来るものです。
麻やデニムもあくまで「かすれた生地の表情」に「装飾性」を感じるからこそ、トレンドなわけであって。何が何でも麻やデニムじゃなきゃオシャレじゃない...というわけではありません。
シワが気になる人が素材で装飾性を取り入れるなら...麻の風合いを皺になりにくいポリエステルで表現した化繊素材のスーツを選ぶのも一つの手。

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近年の素材の進化、とりわけ合成繊維の素材の進化は目を見張るものがあります。一見天然の麻素材のように見えて、シワになりにくい、洗えるなどのイージーケアな素材が流通しています。
そもそも「生地のかすれた感じがうちの職場だと...」なんていう人は、ウールと麻の混合の物を選んでかすれた表情を弱くしたり。同じ麻の混合率でも、色の暗めのモノを選ぶとかすれた表情を、近づいた時にニュアンスを感じる程度に抑えることも出来ます。

photo by https://goethe.nikkei.co.jp/fashion/business/140722/index.html
クールビズは少しカジュアルなスタイルが許容される時期。そこでリネンやデニムのジャケット・スラックス。真夏に麻混合(麻100%よりも皺になりにくい)の綿シャツなどで素材の「装飾性」を取り入れるのも職場のドレスコードとトレンドのバランスの取り方の一つ。
極論素材に固執する必要はなし。2017年秋冬にスーツの「柄」や「ディティール」に装飾性を求めた流れが、2018年春夏になって素材の「質感・表情」や「色」にも「装飾性」を求める傾向になった...というだけ。
素材で装飾性を取り入れることが難しければ、「柄」や「ディティール」で「装飾性」を加えてもOK。「柄」や「ディティール」にトレンドについては「2017年秋冬トレンド解説」や「英国調って何かを解説」の記事を参考にしてください。
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